桜島大噴火湾岸事業所アンケート

 鹿児島大学地域防災教育研究センターと南日本新聞社では共同で、桜島を取り囲む鹿児島湾沿岸部の200事業所を対象に、桜島大噴火に関するアンケート調査を行いました。南日本新聞社の許諾を得て、以下に南日本新聞2013年3月10日付紙面を掲載します。 アンケート依頼文 アンケート本文




事業所アンケートに寄せて

「想定外」桜島には使えず

鹿児島大学地域防災教育研究センター特任教授 岩松 暉

 東日本大震災では「想定外」なる言葉がはやった。原発はさておき、確かに貞観津波は奈良時代の話だ。しかし桜島は百年前わが国で20世紀最大の噴火をしている。来るべき桜島噴火で「想定外」なる言い訳を使うことは許されない。
 では「想定外」に備えているであろうか。アンケートの結果を拝見すると、桜島の大噴火が近づいていることも、大きな影響があるだろうことも認識しておられるようだが、対応策を考えているところは少ない。ローマのカエサルは「多くの人は見たいと欲する現実しか見ていない」と名言を吐いたという。まさに「考えたくないものは考えない」を地で行っているようだ。
 もう一つ気になることがある。自由記述欄で、行政への要望はたくさん書いてあるが、自己の対応策についてはほとんど無記入である。防災はお上任せとの風潮があるようだ。しかし東日本大震災で見たように、広域同時多発災害では行政の力には限界がある。「自分の命は自分で守る」のが災害の鉄則である。
 もっと想像力を働かせて「想定外」を想定してみよう。内閣府の「広域的な火山防災対策に係る検討会」ではさまざまな事態を想定している。これとて「要調査研究」という事項の羅列で不十分ではあるが、ぜひ一読してほしい。鹿児島では毎日降灰を浴びているのだから、東京の人よりも、もっと具体的に想像ができるはずである。桜島大正噴火では、溶岩流出だけでなく、地震と液状化、地盤沈下と小津波、広域にわたる大量の軽石・火山灰の降下、長年月の土石流災害、伝染病など、同時多発広域複合災害の様相を呈していた。
 寺田寅彦は「文明が進むほど災害は激烈の度を増す」と喝破したが、鹿児島でも人口の一極集中と過疎高齢化の進行、交通・情報インフラの発達、産業の高度化、人工埋立地の増大など、利便性向上の陰で災害に対する脆弱性が増大している。 企業も「想定外」の事態に備えて、事業継続計画(BCP)を策定しておくことが不可欠である。火山災害は長期にわたるから、顧客を一度、他に奪われたら二度と戻ってくることはない。それは倒産と雇用喪失に直結する。競合他社との相互応援協定により生産を継続する術を考えておく、被害が軽微な部門に限られた資源を集中して生産を維持する―など生き残り策を事前に準備しておくことが望まれる。
 そのほか、一例を挙げれば、エアフィルター、非常用電源、地下水源などを用意するとともに、ある程度ストックを置くなど長期の物流途絶を覚悟した対策を講じておく必要があろう。社員とその家族を守ることも事業継続に欠かせない。
 こうした受け身策だけでなく、例えば大量降灰時でも機能する携帯電話アンテナを開発し、富士山噴火を懸念している関東圏はじめ、活火山周辺地域に売り込むといった攻めの姿勢も重要であろう。

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