鹿児島大学地域防災教育研究センター(Research and Education Center for Natural Hazards)

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防災ワークショップ「大規模火山噴火時の地域防災」を開催

2016-03-24

 3月5日(土)、鹿児島大学共通教育棟1号館125号講義室において、防災ワークショップ「大規模噴火時の地域防災」(地域防災教育研究センターと次世代安心・安全ICTフォーラムによる共同開催)が開催され、市民、国・地方自治体防災関係者、気象台職員、民間企業関係者、次世代安心・安全ICTフォーラム関係者、学内教職員、学生など100名が参加しました。

  ワークショップは、第1部「何が起きるか、何をなすべきか」と第2部「大規模火山噴火に立ち向かう最新技術開発」の2部構成で行われました。

 

 〈第1部〉

 第1部は、下川悦郎地域防災教育研究センター特任教授の司会で進められました。
 冒頭、前田芳實学長は、「火山災害に係わる地域防災も次期中期計画の重要な課題の一つ。積極的に取り組み、安心安全な地域づくりに貢献していきたい。」と主催者挨拶を行いました。次いで、文部科学省地震・防災研究課松井浩司氏の来賓挨拶がありました。

 第1部では、小林哲夫名誉教授の基調講演に続き、二つのセッション 1)どんなことが起きるか、2)何を準備すべきか、においてそれぞれ話題提供、討論が行われました。

 小林哲夫名誉教授は、「大規模噴火の実例」と題して講演し、桜島の大正噴火(1914年)と諏訪之瀬島の文化噴火(1813年)に共通する現象について、次のように話しました。「これらの噴火では多量の軽石を放出するプリニー式噴火で始まり、火砕流の発生、溶岩流出と続いた。地震も発生、諏訪瀬島では山体の一部が崩壊した。こうした噴火災害に対しては、島では事前の島外避難が大事。また大量の軽石は船の航行に支障をきたす。」

 セッション 1)では、(株)ホウセイ・技研常務執行委員技師長 三田和朗氏が「大噴火でどんなことが起きるか」と題し、次のように話しました。「桜島で大正噴火級の大噴火が起きた場合、現代では深刻な被害が予想される。このようなリスクを低減するための方策を今から講じる必要がある。」

 セッション 2)では、鹿児島県危機管理局危機管理防災課課長 大竹俊光氏、鹿児島市市民局危機管理部危機管理課主任 郡司清隆氏、鹿児島大学病院救急病棟副看護師長 内山美香氏の三つの講演がありました。

 大竹氏は、「災害時の体制」と題し、次のように話しました。「本県では桜島や霧島、口永良部、諏訪瀬島など活発な火山活動が続いている。桜島では大正噴火級の大規模噴火も想定されている。こうした状況に対応できる効果的な防災体制を構築する必要がある。」
 郡司氏は、「セーフコミュニティによる取組」と題し、安心安全まちづくりの一環として、鹿児島市が桜島の高免町町内会をモデル地区として進めている、桜島地区における避難体制の再構築に取り組む「防災・災害対策」について紹介しました。
 内山氏は、「病院の準備、家庭の備え」と題し、災害発生直後から急性期の災害医療を担当する災害派遣医療チーム(DMAT)の体制整備や災害訓練、災害支援ナースの育成、物資の備蓄など大規模な災害が発生した場合を想定した鹿児島大学病院の取り組みについて紹介しました。

 各セッションでの講演を踏まえて、大規模火山噴火による被害の想定、行政の防災対応、住民の防災対応、避難訓練、防災情報などを巡って活発な議論が行われました。

 次世代安心・安全ICTフォーラム企画部会部会長の熊谷 博氏が挨拶し、第1部を閉じました。

 第1部終了後、大学のレストラン「ガロア」でランチミーティングが開催され、大規模火山噴火時の地域防災に向けた具体的な連携のあり方について活発な議論がなされました。参加者は、NPO法人桜島ミュージアム、公益法人鹿児島青年会議所、公益法人気象予報士会、(株)ホウセイ、鹿児島大学病院救急病院棟、鹿児島県危機管理局、鹿児島市危機管理課、垂水市自主防災連合会、鹿児島地方気象台、大隅河川国道事務所、国交省九州地整、内閣府防災担当、文科省地震防災課、次世代安心・安全ICTフォーラム、鹿児島大学地域防災教育研究センターでした。

 

〈第2部〉

 第2部は、熊谷 博氏の司会で進められました。
 第2部の開会にあたって富田二三彦 次世代安心・安全ICTフォーラム副会長の主催者挨拶、森本 輝内閣府政策統括官〔防災担当〕付企画官の来賓挨拶がありました。

 第2部では、山里 平気象研究所火山研究部長の基調講演に続き、技術セッション「噴火被害の観測・予測・減災技術の最前線」(コーディネータ 臼田祐一郎)が設けられました。技術セッションでは、防災科学技術研究所レジリエント防災・減災研究推進センタープロジェクトディレクター 臼田裕一郎氏、国土交通省九州地方整備局企画部火山防災対策分析官 永吉修平氏、気象研究所火山研究部第二研究室主任研究官 新堀敏基氏、情報通信研究機構電磁波計測研究総括 浦塚清峰氏、同耐災害ICT研究センターワイヤレスメッシュネットワーク研究室研究マネージャー 井上真杉氏、同ワイヤレスネットワーク研究所ディペンダブルワイヤレス研究室室長 三浦 龍氏から発表がありました。

 山里 平氏は、「大規模噴火の監視と防災の課題」と題して講演し、次のように話しました。「わが国では都市化が進んだ現代において大規模噴火はほとんど経験していない。火山噴火の監視や大量の降灰対策など大規模噴火災害に対する防災対策は多くの課題を抱えている。」

 臼田裕一郎氏は、「災害リスク情報の共有と利活用」と題して、災害に対する予防力・対応力・回復力を向上させるための、平時および災害時における情報共有・利活用に関する実際の対応事例と国としての新しい動きを紹介した。
 永吉修平氏は、「火山防災への取り組み」と題し、平成23年の新燃岳噴火災害や平成27年の口永良部噴火災害に対する九州地方整備局としての防災対応の取り組みについて紹介しました。
 新堀敏基氏は、「大規模噴火の降灰予測」と題して、1914年桜島大正噴火の規模を想定した、領域移流拡散モデルによる降灰・降礫量のシュミレーション計算結果を紹介しました。

 浦塚清峰氏は、「雲の上から火山の状況を把握-航空機搭載レーダ-」と題して、NICTが開発したPi-SAR2による観測事例をもとに、航空機搭載SARの火山での有用性や課題について紹介しました。
 井上真杉氏は、「地域内の通信と情報共有を実現する途切れにくいネットワーク」と題して、防災対応における映像伝達手段として活用が期待される耐災害情報通信基盤NerveNetの実証事例を紹介しました。
 三浦 龍氏は、「滞空時間の長い無人機による無線中継と災害モニタリング」と題して、滞空飛行時間の長い固定翼の小型電動無人機を利用した通信の確保や、映像の長距離伝送システムの研究開発と実証実験について紹介した。

 講演を踏まえ、技術の実際への適用などを巡って活発な議論が行われました。

 最後に、浅野敏之地域防災教育研究センター長の閉会挨拶で第2部を閉じました。

 

講演の様子①

 

 

 

 

 

 

【講演の様子①】

 

講演の様子②

 

 

 

 

 

 

【講演の様子②】

 

講演の様子③

 

 

 

 

 

【講演の様子③】

 

 

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