11月26日(土)、鹿児島大学工学部建築学科01教室において、平成28年度防災・日本再生シンポジウム「島嶼の自然災害と防災」(主催 地域防災教育研究センター、共催 一般社団法人国立大学協会)が開催され、自治体の防災関係者、鹿児島地方気象台職員、民間企業関係者、学内教職員、学生など96名が参加しました。
シンポジウムは、岩船昌起 地域防災教育研究センター特任教授の司会でプログラムに沿って進められました。
冒頭、前田芳實学長から、「社会インフラや防災インフラの整備が遅れた島嶼で自然災害が発生すると、被害は深刻化する場合がある。島嶼における防災減災対策の強化が求められている。本シンポジウムでは、自然災害に対する島嶼の防災の現状と課題を明らかにするとともに、課題を解決するための方策について、行政、市民を交えて議論したい。」と、主催者としての開会挨拶がありました。
一般社団法人国立大学協会の山本健慈 専務理事から共催者として、つぎのような来賓挨拶がありました。「本シンポジウムは、国立大学が果たす役割や存在意義の重要性について広く社会の理解を得るため、当協会が共催して開催するものである。活発な意見交換を通じて、地域の皆様にとって本シンポジウムが意義あるものとなることを祈念している。」
次いで、3つの講演がありました。
中尾 茂 理工学研究科教授は、「薩南諸島の地震・津波・火山噴火」と題して、次のように話しました。「この地域周辺は海側プレートが陸側プレートの下に沈み込む位置(海溝)にあり、プレート境界や陸のプレート上で地震・津波が発生し、それによる災害も発生している。諏訪之瀬島や口永良部など活火山も分布し、火山噴火災害も発生している。今後も地震・津波や火山噴火による自然災害に備える必要がある。」
升屋正人 学術情報基盤センター教授は、「島嶼における災害時の情報通信網の課題」と題して、次のように話しました。「島嶼の情報通信基盤は本土より20年遅れている。未だブロードバンドが未整備の地域も多い。たとえあっても情報通信網は脆弱で、被害を受けやすく、復旧に時間がかかる。島嶼における災害時の警戒避難対応や発災時の防災対応に資する情報通信基盤と体制の整備は喫緊の課題である。」
平嶺 浩 鹿児島県危機管理局危機管理防災課地域防災監は、「離島の防災対策」と題して、次のように話しました。「東日本大震災の被害状況を踏まえ、平成24~25年度地震等被害予測調査を行った。人的被害や建物被害など甚大な被害が想定されるが、警戒避難対応や建物の耐震化などの防災・減災対策を実施すれば被害を大きく軽減できる。市町村や国と連携しながら、大規模災害対策を進める。島嶼については、離島活性化交付金や奄美群島成長戦略推進交付金による防災対策を推進する。」
パネル討論「テーマ:島嶼の自然災害にどう備えるか」に入って先ず、丸谷美紀 医学部保健学科教授から、「島嶼の自然災害における健康支援」と題して、島嶼の住民がもつ絆の力を活かしながら災害時の医療や健康支援に当たることが大切である、との話題提供がありました。
パネル討論は、中尾 茂、升屋正人、平嶺 浩および丸谷美紀の4氏に、奥田敏文 奄美市総務部総務課長と岩切平治 三島村副村長が加わり、下川悦郎 地域防災教育研究センター特任教授と岩船昌起の司会で行われました。
討論は、自然災害に対する島嶼の防災の現状と課題(論点1)と、課題を解決するための取り組み(論点2)の二つの論点に沿って進められました。司会者からの問いかけに対し、パネリストから多くの意見が出されました。奥田氏と岩切氏からは、島嶼の地域防災についての現状と課題、今後の取り組みについて、島の自然的・社会的条件を踏まえた具体的な意見が出されました。また、会場の参加者からも多数の意見が寄せられ、活発な議論となりました。
最後に、浅野敏之 地域防災教育研究センター長の閉会挨拶でシンポジウムを閉じました。
【講演の様子①】
【講演の様子②】
【講演の様子③】
【話題提供の様子】
【パネル討論の様子】
【質疑応答の様子】