第17回鹿大防災セミナー(地域防災教育研究センター主催)が8月8日(火)に開催されました。本セミナーには、本学の教職員および学生のほか、鹿児島地方気象台など学外の方々を含め、44名の参加がありました。
本センターの放射線災害分野責任者である松成裕子教授(医歯学域医学系)の開会挨拶に続き、原子力災害の視点から二つの講演がありました。そして、4月から本センターに就任しました石峯康浩特任助教の講演が行われました。
土橋仁美看護師(鹿児島大学病院看護部)は「原子力災害による健康影響―福島県の現状についてー」と題して、東京電力福島第一原子力発電所事故とそれによる放射線防護対策について解説するとともに、県民健康調査(外部被ばく線量の推計、甲状腺検査、健康診査、心の健康度・生活習慣に関する調査、任産婦に関する調査)について紹介し、複合災害による混乱が住民の不安や不信感を増幅させたこと、放射線被害とその防護対策に関する認識が不十分であったこと、リスクコミュニケーションの重要性を指摘しました。
松川京子看護師(メディポリス国際陽子線治療センター)は「鹿児島県における保健師の放射線に関する実態調査から」と題して、県内外(原子力発電所をもつ県内と県外の2県)の保健師(保健所保健師と市町村保健師)を対象に実施したアンケート調査結果について紹介、3県間、また県内では市町村(UPZの内外)間で保健師の放射線に関する知識や認識に差が認められること、その差は原子力発電所の立地場所と関係し、放射線に関する教育や訓練が影響していることなどを報告しました。
石峯康浩特任助教(地域防災教育研究センター)は「噴煙柱崩壊で火砕流が発生する物理条件に関する理論・観測研究」と題して、大規模な火山噴火で発生し、柱状に成層圏まで立ち昇る噴煙柱と、その噴煙から発生する火砕流の発生メカニズムについて説明するとともに、これらのメカニズムを解明するための物理モデルの開発状況と、そのモデルによる予測を検証するためのレーダーによる噴煙観測の有用性について紹介されました。今後はこの物理モデルで得られた知見を活用しつつ、本学が本年3月に導入したKuバンド・レーダーによって桜島で高解像度の噴煙観測を実施することで、火砕流の発生メカニズムの理解が深まることが期待されます。
講演後には質疑応答も行われ、活発な議論・意見が交わされ、教職員や学生、防災関係機関との交流と相互理解、連携につながる場となりました。
【土橋仁美氏の講演の様子】
【質疑応答の様子】
【松川京子氏の講演の様子】
【石峯康浩特任助教の講演の様子】