令和2年度地域防災・医療部会報告会「令和2年7月豪雨による熊本災害の実態解明と鹿児島県の防災への教訓等に関する研究会」(共催:産学・地域共創センター地域防災・医療部会、地震火山地域防災センター)を3月16日(火)にオンラインで開催いたしました。本学の教職員と学生、鹿児島地方気象台、垂水市、霧島市など学外の防災業務担当者を含め、45名の参加がありました。
研究会代表者である寺本氏(農水産獣医学域農学系准教授)からの趣旨説明の後、6件の調査報告が行われました。
伊藤真一氏(理工学研究科工学系助教)は、令和2年7月豪雨時のスネーク曲線と平成30年7月豪雨時のスネーク曲線を比較することで、令和2年7月豪雨は短期的な降雨強度だけでなく長期的な降雨量に関しても非常に強い雨が降っていたことを報告しました。
寺本行芳氏は、熊本県芦北町伏木氏の土砂災害をもたらした斜面崩壊は、厚く発達した強風化層中に、記録的な豪雨に伴う多量の雨水が浸透したことにより発生したことなどを報告しました。
酒匂一成氏(理工学研究科工学系教授)は、熊本県南部の国道219号沿いの道路、堤防、橋梁の被害状況について仮復旧状況について報告しました。また、鹿児島県大隅半島の国道269号被害や宮崎県西米良の国道219号の被害とも比較し、今回の道路被害のメカニズムについて取りまとめました。
齋田倫範氏(理工学研究科工学系准教授)は、鹿屋市新川町地区における内水氾濫について、強い降雨がその主要因であることを報告しました。また、内水路の溢水に対する斜面崩壊に伴う土砂流入の影響についても検討しました。
岩船昌起氏(共通教育センター教授)は、予防的避難できない時の緊急避難経路の有無が、球磨村での犠牲者発生要因として重要なことを指摘しました。地形環境的に逃げ道がない球磨川本流地区で集落を維持するには、要配慮者も移動可能な垂直避難施設建設を含めた緊急避難計画が必要なことを指摘しました。
古里栄一氏(産学・地域共創センター特任准教授)は、防災学術研究・技術の社会実装を念頭において、ハザードマップに加えタイムラインの適用の実際と地域での減災行動を八代市を対象として調査し、教訓と今後の課題について提案しました。ハザードマップとタイムラインの実質化に向けての水工学と関連土木実務での方向性や人材育成が重要であることを指摘しました。
講演後は質疑応答があり,活発な議論・意見が交わされ,教職員や学生,防災関係機関との交流と相互理解,連携につながる場となりました。