去る8月31日(木)に自治体職員や地域で防災活動に取り組む方々などが参加した「令和5年度防災啓発研修会~平成5年鹿児島豪雨災害から30年~」(鹿児島県等主催、鹿児島大学地域防災教育研究センター共催)が開催され、そこで、鹿児島大学地域防災教育研究センター長の地頭薗隆教授(農水産獣医学域農学系)が講演を行いました。
冒頭、鹿児島県長島危機管理防災局長から、①平成5年は100年に一度と言われる豪雨や戦後有数の大型台風などが県内各地に未曽有の大災害をもたらしたこと、②雨が小康状態になってから、あるいは止んでから発生した土砂災害もあること、③近年、被害が激甚化・頻発化しており、治水などハード面の整備と併せて県民の防災知識の修得や防災意識の向上などが不可欠と、続いて一般財団法人消防防災科学センターの梅原理事からは、これまで経験したことのない被害が全国各地で発生する今、被害を少しでも減らすためには、いざというときのためにどういう行動をとるべきか日頃から考えることが大切とそれぞれ挨拶されました。
その後、鹿児島地方気象台の気象防災情報調整官の平山久貴様が、「大災害の記憶といのちを守る防災情報」とのテーマで、最近のデジタル技術による分析なども踏まえ、平成5年当時の気象現象や課題を振り返りました。その中で、①平成5年は長雨に加えて相次ぐ豪雨と台風の襲来により、土砂災害など災害の危険度が広範囲に高まったこと、②8.1豪雨では県内に複数の線状降水帯が発生したが、8.6豪雨の場合、線状降水帯ではなかったと考えられると報告されました。災害が激甚化し、地域の防災力向上が強く求められる今、自分は大丈夫との意識の払拭や若い世代への災害の継承、リアルタイムに災害の危険度を知らせる「キキクル」の活用とともに、災害時にどう対応するか普段から家庭や地域で話しておくことの大切さを強調されました。
続いて、地頭薗教授が「平成5年鹿児島豪雨災害から30年~地域防災の新たな展開を考える~」と題して講演。日本に自然災害が多い理由について日本列島におけるプレートの動きと地震・火山の関係から説明し、また国土が広く覆われるシラス(火山噴出物)は雨による侵食に弱く、鹿児島県での年間土砂災害発生件数は全国1位とも話しました。
平成5年は6~9月にかけて繰り返し土砂災害が発生、犠牲者121名のうち105名(87%)が土砂災害起因であることを紹介し、当時の県内各地の土砂災害の様子とその発生原因、またハード整備の現状や土砂災害(特別)警戒区域制度について説明があった後、最後には、今後の防災技術の進展に併せてこれら技術を上手に使う住民の防災意識の向上が欠かせず、そのためには防災マップを活用して自宅周辺の危険な場所や過去に起こった災害を書き込むなどの活動を日頃から地域全体で取り組んでほしいと締めくくりました。