鹿児島大学地域防災教育研究センターでは、これまで36回にわたり、センター関係教職員や防災機関など専門家との情報交流を目的に防災セミナーを実施してきました。
今年度が県内各地に未曽有の災害をもたらした平成5年鹿児島豪雨災害から30年の節目を迎えるのを機に、地域防災の中核となる自治体をはじめ様々な職場の方々や地域住民の皆様が災害・防災について基本的なことを体系的・網羅的に学べるよう、自治体の方々のご意見もお聞きしながら、5回シリーズで10月から来年1月にかけて開催(いずれもオンライン・参加費無料)することとしました。
その第1回目(通算37回目)が10月2日(月)に開催され、本センター長を兼務する地頭薗隆教授(農水産獣医学域農学系)と鹿児島地方気象台の平山久貴気象防災情報調整官の講演がありました。
地頭薗センター長からは、冒頭、①災害が大規模化、複合化する中で大学と地域がかねてから緊密に連携する必要性が高まり2011年6月にセンターが設置されたこと、②センターでは、地域ニーズを収集し課題解決を図るほか、シンポジウムやセミナーを通じた防災人材育成をはじめ、鹿児島大学オリジナルの研究成果を収集し、防災研修教材としての活用を目指していることなど、地域防災力の向上に取り組んでいるセンターについて紹介がありました。
また、平成5年の鹿児島豪雨災害や平成22年の奄美豪雨災害における各地での土砂災害やその原因について説明する中で、①避難所まで遠い集落内での避難時に発生した土砂災害や、②ほとんど雨が降っていない中でこれまでの雨の蓄積により土砂災害が発生した事例などを紹介し、今後の教訓として学ぶべきものがあると話していました。併せて、日本に自然災害が多い理由についてプレートの動きなども紹介しながら説明する中で、日本の活火山111の1割は鹿児島にあるとも話していました。
次に、平山気象防災情報調整官からは、平成5年の8月豪雨、平成9年の針原豪雨、平成18年の北薩豪雨について被害状況と前線や降水量など気象的背景について説明がありました。その中で、雨が止み、大丈夫と思い、自宅に戻ってから土砂災害に遭遇した針原豪雨の事例も紹介されました。 また、鹿児島は台風の上陸数が全国1位(離島を除く)で、近年、日本近海でも水温が高く勢力を維持したまま近づく台風が増えていることや、地球温暖化の影響がもっとも大きいシナリオ(4℃上昇)によると、21世紀末には日本の南海上に猛烈な台風(最大風速54m以上)が存在する頻度が増加する可能性が高いとして、温暖化を少しでも止める必要があると話されました。最後に、近年、大雨の発生回数(80mm/1時間以上)は増加傾向のため、①危険な場所にいる方は、警戒レベル5(災害が発生・切迫)ではなく、警戒レベル4までに必ず避難してほしい、②住んでいる地域のリスクを家族や地域全体で知ってほしい、③今いる場所の危険度が分かるキキクルも活用してほしいなど災害への備えを強調されていました。