2025年1月10日、鹿児島大学地域防災教育研究センター主催の第45回鹿大防災セミナー「避難所生活の支援」が開催されました。今回のセミナーはオンライン(Zoom)で行われ、215名が参加しました。司会は本センター防災教育部門長の松成裕子教授(医歯学域医学系)が務め、2つの講演が行われました。
最初に、本センター調査研究部門の田松裕一教授(医歯学域歯学系)が「大規模災害時の避難所における口腔ケア」と題して講演を行いました。講演では、大規模災害における歯科医師の役割が説明され、高齢者の誤嚥性肺炎予防が特に重要な課題であることが述べられました。阪神・淡路大震災や東日本大震災の事例をもとに、避難所生活での口腔ケア不足が健康被害を引き起こすリスクについても触れられました。また、水や道具が限られる状況下で口腔を清潔に保つ方法や、口腔機能の低下を防止するための運動、さらには防災セットに歯ブラシや洗口剤などを準備する必要性も指摘されました。具体例として、高齢者の肺炎予防や子どもの虫歯対策が挙げられ、多職種との連携の重要性が強調されました。
次に、本センター防災教育部門の福満博隆准教授(共通教育センター)が「避難生活者の健康づくり支援について」と題して講演を行いました。福満准教授は、避難所や仮設住宅での生活が高齢者をはじめとした避難者の身体的・精神的健康に及ぼす影響について指摘しました。特に、避難所生活での生活習慣の乱れや社会的孤立が健康度の低下や生活機能の悪化を引き起こす主な原因であると述べました。さらに、口永良部島での調査をもとに、健康支援の一環として行われたレクリエーション活動の具体的な効果を紹介しました。災害時における行政と民間団体の連携不足や、支援体制構築におけるマンパワーの不足といった問題点も挙げ、日常的な健康づくりと災害時の迅速な対応を可能にする体制の必要性を提案しました。