2025年10月28日(火)、鹿児島大学地域防災教育研究センター主催の第50回鹿大防災セミナー「地震災害のしくみと歴史的教訓」が開催されました。今回のセミナーはオンライン形式で行われ、506名が参加し、本センター地域連携部門長の黒光貴峰教授(法文教育学域教育学系)の司会進行のもと、二つの講演が行われました。
最初に、本センター兼務教員の小林励司准教授(理工学域理学系)が「地震災害のしくみと防災」と題して講演を行いました。
小林准教授からは、まず、一般の人が言う「地震」は地面の揺れであるが、専門家の言う「地震」は、地球内部で急激な変動(多くの場合は断層運動)が起こり地震波が出る現象を指すことが多い、との話がありました。
そして、地震はプレート境界やその周辺で多く起こっており、4つのプレートで構成されている日本付近では地震が非常に多く起こっていることから、日本ではどこでも地震に備えておかなければいけないとの話がありました。
地震による災害については、被災地の写真等を示したうえで、地震・津波対策の大半は対策可能であるが、お金と時間が限られており、命を守る対策を優先する必要があると話されました。
また、地震の揺れ自体で亡くなる方はほぼおらず、建物が壊れたり、家具が倒れたり、津波や火災に遭ったり、土砂に巻き込まれたりして亡くなるので、事前に備えておけば、かなり被害を減らすことができ、また、地震は不意打ちでやってくるので、事前の備えがとても重要であると強調されました。
さらに、地震学の歴史はまだ100年ちょっとであることなどから、地震や津波の予測は不確定要素が大きく、地震動予測地図や津波のハザードマップなどを過信しないよう話されて、小林准教授の講演は終わりました。
次に、本センター運営委員の佐藤宏之教授(法文教育学域教育学系)が「歴史災害を防災に活かす-Doing Historyの試み-」と題して講演を行いました。
佐藤教授からは、はじめに、災害復興に関し、短期的に危機克服の最良の処方箋と見えたものが、長期的には社会にダメージを与えたり、長期的な観点から選択された対応が、短期的には社会的負担を増大させることがあるなど、どのような時間の範囲で見るかによってレジリエンスの捉え方が異なるため、災害による直接の被災や復興とは異なる側面から社会の姿を解明する必要があるとの話があり、具体的な歴史資料等をもとに、歴史災害から何を学び、それをどう防災に活かすかなどについて説明がありました。
そして、わたしたちは、過去から未来へ歴史を継承するだけでなく、今まさに自らの手で「現代」という歴史を作っており、歴史研究者の真似事をするのではなく、社会生活をよりよくするために歴史を賢く使い、現代的な課題にどう取り組んでいくかを思考する、「Doing History(歴史する)」の試みを呼びかけました。
さらに、災害で壊れたものを直し、失われたものの代用品を与えることで被災前に戻そうとすれば、社会が被災前に抱えていた課題も未解決のままの状態に戻すことになるので、災害への対応は、もとに戻すのではなく、被災を契機によりよい社会を作り出す創造的な復興であるべきであると強調されました。
災害を単に恐れるだけではなく、それを科学的に見る目を養い、そこから得た知識や情報を自分の生活に活かし、防災・減災・縮災に役立てるような対応力、行動力が、今を生きる私たちに求められていると話されて、佐藤教授の講演は終わりました。



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