1月21日、奄美市市民交流センターのマチナカホールにおいて、鹿児島大学地域防災教育研究センターシンポジウム「トンガ沖大噴火『津波警報』避難行動の検証」(主催:国立大学法人鹿児島大学、共催:鹿児島県、奄美市、後援:大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町、喜界町等)を開催しました。参加者は、奄美群島の自治体や教育関係者や地域住民、県内外の自治体や防災関係機関関係者、教育研究関係者、学生など、さまざまな職種・地域の方々であり、会場とオンラインでの参加で計185名となりました。
開会にあたり、岩井 久理事(企画・社会連携担当)から主催者挨拶、鹿児島県大島支庁の新川 康枝支庁長(鹿児島県危機管理防災局災害対策課の福永 和久課長による代読)、奄美市の安田 壮平市長から共催者挨拶がありました。続いて、総合教育機構共通教育センターの岩船 昌起教授から、シンポジウム開催の趣旨説明を行いました。
同シンポジウムは、二部の報告と、総合討論からなります。
第一部では、京都大学特任教授(鹿児島大学名誉教授)の小林 哲夫教授に「潮位変化をもたらす噴火について」と題して、爆発的な噴火に伴う気圧波や山体崩壊による津波発生の事例等を紹介し、火山噴火にともなう津波発生の可能性について説明頂きました。理工学域工学系の柿沼 太郎准教授は、「気圧波によって生成・増幅される津波」と題して、気圧波の動態と水深との関係にかかわる津波発生のメカニズムを、動画等を用いて解説しました。
第二部では、鹿児島地方気象台の緒方 誠地震津波火山防災情報調整官には「津波警報発表の経緯」と題して、潮位・気圧変化と津波警報等発表状況、トンガ事案を受けての気象庁での今後の対応のあり方を提示し、特に、津波警報当時の防災行動についての説明を、鹿児島県危機管理防災局の福永 和久課長には「鹿児島県における対応」と題して、当日の県の対応を説明し、県による津波想定に触れつつ、今後起こりうる津波等への対応について説明いただきました。また、奄美群島北部6自治体での対応について、奄美市総務課危機管理室の稲田 一史室長を始めとする防災担当者らには、津波警報発表時の状況を振り返り、その後に講じた対策等を報告いただきました。最後に、岩船教授から「奄美群島での避難行動アンケート調査」(共同研究者:安部 幸志(法文教育学域法文学系))について報告しました。避難時の移動手段に関して「半数以上が車で移動」、避難(移動)完了時間に関して「20分以内が3分の2弱」等の調査結果を示し、「自宅の標高を知らない人が3分の2」「(屋内安全確保等で)移動しなかった方が4分の1」等の報告がありました。
総合討論では、まず、各報告の質疑が行われ、会場をお訪れた参加者から自治体の対応等についての質問がありました。続いて、あまみエフエミの久米 蘭パーソナリティにて、警報直後からの放送等にかかわる追加報告が行われました。また、奄美群島での津波想定と津波からの逃げ方を確認しました。津波からの避難では、高台への「立退き避難」だけでなく「垂直避難」も行動の選択肢に加えるべきであり、津波の規模(高さ)、津波到達予想時刻、自宅の標高、家屋の構造、各自の体力や移動手段等も考慮しつつ、自らが避難のあり方を決めるべきことが強調されました。そして、それには、いくつかのケースでの避難行動を各自が事前に考えて準備しておく必要があり、画一的でなく、考えさせる防災教育が重要であることも提示されました。
今回のシンポジウムでは、大学関係者だけでなく、鹿児島県や奄美群島北部6自治体の防災担当等関係者が一つの場に集い、トンガ沖大噴火「津波警報」避難行動を振り返りつつ、津波防災・地域防災についての共通認識を得られたことが、大事な成果として注目できます。
最後に、地域防災教育研究センターの地頭薗 隆センター長は、平成22年の奄美豪雨災害の際に緊急的に結成された、本学教員28名の総合的な調査研究チームによる調査研究成果を奄美大島自治体に還元するために、奄美市でシンポジウムを開催したことを回顧し、「奄美大島は同センター創設の原点である」ことを述べ、令和4年度から開始した新たなプロジェクトの遂行を通じて、同センターが地域防災力の向上を図り、より一層地域に貢献していくとの目標を強調して、シンポジウムを締めくくりました。