令和5年12月10日(日)に薩摩川内市川内駅コンベンションセンターSSプラザせんだいにおいて、標記シンポジウム(主催:鹿児島大学地域防災教育研究センター、共催:一般社団法人国立大学協会、薩摩川内市、鹿児島地方気象台)を、会場とオンライン配信(第一部)の併用で開催しました。当日は、県内外の一般市民、学生、自治体や防災関係機関などから計177名の方々にご参加いただきました。
本シンポジウムは、開催地の薩摩川内市、鹿児島地方気象台、日本赤十字社と連携して実施したものですが、特に、鹿児島大学地域防災教育研究センターが地域防災力の向上を目指し取り組んでいることから、企画段階から薩摩川内市と緊密に連携し、地域事情を踏まえた講演内容としたことに加え、講演により防災意識を高めた後に希望者が災害時の行動を実践的に学べるワークショップ、さらには地震の揺れと家具の倒壊をVRで疑似体験できるコーナーも設け、全国的にも珍しい取組となりました。
開会にあたり、鹿児島大学の佐野輝学長から主催者として開会挨拶、薩摩川内市の田中良二市長から開催地挨拶、一般社団法人国立大学協会の位田隆一専務理事から来賓挨拶があり、それに続いて第一部の講演が開始されました。
始めに、地頭薗隆センター長は「地域防災教育研究センターの取組」と題して、鹿児島大学の地域防災活動の歩み、本センターの概要、これまで実施した主な防災シンポジウム、令和5年度の主な活動等を紹介し、今回のシンポジウムの趣旨説明を行いました。寺本行芳准教授(農水産獣医学域農学系)は「土砂災害に備える」と題して、薩摩川内市における土砂災害発生件数や写真を示しながら、土砂災害の発生仕組み、土砂災害に備えるための防災対策、土砂災害(特別)警戒区域や防災マップの活用について説明しました。齋田倫範准教授(理工学域工学系)は「河川災害に備える」と題して、河川の基本知識、外水氾濫への対策、流域治水等の説明があり、北薩地域の災害状況と結び付けて災害時の避難方法等について講演を行いました。小林励司准教授(理工学域理学系)は「1997年鹿児島県北西部の地震と今後の備え」と題して、地震発生の仕組みと被害の様態、1997年に薩摩川内市で最大震度6弱を観測した県北西部地震の特徴を説明し、日常から地震に備える重要性を強調しました。土肥幹治主査(日本赤十字社事業局救護・福祉部防災業務課)は「避難の妨げになる「正常性バイアス・同調性バイアス」」と題し、日本赤十字社の救護活動や防災事業を通して、避難行動に影響する2つのバイアスをいかに乗り越えるかについて講演を行いました。
講演終了後、鹿児島大学の岩井久理事・副学長(企画・社会連携担当)から閉会挨拶があり、今後の大規模な複合災害に対して文理横断の学際的な災害・防災研究を推進し、その研究成果を還元することにより地域防災力を向上させ、より一層地域に貢献すると強調しました。
次いで第二部の防災教室では、2つのワークショップが行われました。鹿児島地方気象台による大雨防災ワークショップでは、轟日出男要配慮者対策係長から大雨災害から身を守るための知識について説明があったあと、参加者はグループに分かれ、次々と発表される防災気象情報を受け、居住条件や家族構成などを踏まえた行動について意見を出し合っていました。また、原子力災害が発生した場合に避難所で住民による自主的運営ができるよう学ぶ原子力災害版の避難所運営ゲーム(HUG)では、松成裕子教授(医歯学域医学系)の指導の下、様々な事情を抱えた避難者の小学校内での配置について参加者の皆さんが意見を出し合い、避難所生活を疑似体験していました。この場には薩摩川内市職員も参加されていたことからより現場感覚を持った実践的なゲームが展開できました。このほか、会場では酒匂一成教授(理工学域工学系)が学生スタッフとともに、VR技術による地震体験コーナーを設置し、多くの来場者が地震の揺れと室内の倒壊をリアルに体感し、家具固定などの必要性を認識していました。