医学部保健学科看護学専攻にて開講している授業「地域・在宅ケア論 災害対策と危機管理 演習」において、医療的ケア児やALS患者を抱える家族などの大雨時の避難の在り方について考えるワークショップが、医歯学域医学系助教である日隈利香先生(鹿児島大学地域防災教育研究センター兼務教員)の主導のもとに鹿児島地方気象台とも連携し、看護学専攻の3年生80名が参加して、令和6年7月29日(月)に行われました。
学生によるグループワークが始まる前に、鹿児島地方気象台の轟日出男要配慮者対策係長から、近年の大雨の特徴や被害の様子、災害から身を守るために必要なことなどについて、1993年(平成5年)8月6日に鹿児島市内を中心に発生した8.6豪雨災害の被災映像等も用いながら説明がありました。その中で、①上流で雨が降った場合には下流の水位が急激に上昇する危険がある、②道路が冠水すると足元が見えないため歩行は危険、③家屋が浸水した場合にはドアが開かず、家財道具に阻まれて2階への避難もできないこともあり、浸水前に避難する、④土砂災害が予想される場所でも早めの避難が重要との話がありました。
また、このような大雨災害から身を守るためには、①居住する地域でどんな災害が起こり得るのか、どのルートで避難したらよいかをハザードマップ等で把握しておくことや、②気象台からの防災気象情報等の意味を熟知し、いざという時のために活用することが大事として、防災気象情報の詳細を説明し、キキクルの活用も呼びかけながら、少なくとも警戒レベル4が発令された場合は危険な場所から避難いただくよう力説されていました。
その後、学生に事前に提示されていた5類型の10組(医療的ケア児のいる家族やALS患者のいる家族など5類型を前提に、居住地域が浸水予想地区と土砂災害発生想定地区の2分類)に分かれて、①平時から準備しておくもの、②避難のタイミングや避難ルート、避難時の注意事項、そのように判断した理由などについて、それぞれ置かれた状況を踏まえながらグループワークが進められ、討議終了後の発表までの間、将来、要配慮者の方に関わる機会もあることから、いろいろな角度から熱心に討議されている姿が印象的でした。
後日、提出された講義演習の感想からは、①被災動画等を通じて防災意識が醸成され、ハザードマップやキキクルの活用等に興味が生まれた、②初めて要配慮者の方への災害対応の在り方を受講し、その重要性の意識が生まれた、③様々な現行制度を調べるなど防災や要配慮者への対応に関心が生まれた、④将来、保健師や看護師として要配慮者の方と関わる場合、自身の知識を提供し支援したいとの思いが生まれたことなどが伺えたとのことでした。
今回の医学部保健学科看護学専攻の講義演習で行われたワークショップは、本年3月7日に鹿児島地方気象台と本センターが包括連携協定を締結した後の取組でしたが、学生のみなさんの感想を踏まえると協定締結の大きな成果と思われることから、来年度以降も継続できるよう、関係者で検討していくこととなりました。