原子力災害医療における地域連携の新たな一歩

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 2026年2月7日(土)、鹿児島県の原子力防災訓練の一環として実施された、原子力災害拠点病院である社会福祉法人 恩賜財団 済生会川内病院における被ばく傷病者対応訓練を、本学地域連携部門の柳田と防災教育部門の松田史代助教とで視察した。
 本視察は、原子力災害時の医療連携に向けた新たな一歩となる機会となった。
 この訓練は、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ見直された国の原子力災害対策指針に基づき、関係機関の連携強化と地域住民の防災意識向上を目的として、鹿児島県、薩摩川内市および周辺市町、国、事業者等が協働して毎年実施しているものである。地域住民の協力のもと、実践的かつ総合的な訓練が行われている点に大きな意義がある。
 一方、本学は長崎大学、宮崎大学との三大学連携協定「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」のもと、プラネタリーヘルスの実現を目指した教育・研究・地域連携の推進に取り組んでいる。本視察はその取組の一環として、長崎大学が担う高度被ばく医療支援体制のエリアに位置する済生会川内病院の訓練を実地に見学し、今後の大学間および医療機関との連携につなげることを目的として実施された。

 当日は、川内原子力発電所の放射線管理区域内での汚染を伴う負傷者発生を想定した被ばく傷病者対応訓練が行われ、搬送受け入れ後、現場では汚染管理、医療対応までの一連の流れが、実戦さながらの緊迫した状況の中で実施された。また、長崎大学原子力災害対策戦略本部のスタッフも支援として参加しており、福島第一原発事故での医療機関のスタッフとして受け入れた経験を基に助言等が行われ、大学と地域医療機関が連携した実践的体制の構築が進められていることが示された。
 さらに本視察では、長崎大学医歯学総合研究科の吉田浩二先生と済生会川内病院の嵜山敏男院長との間で、今後の連携に向けた意見交換と、記念撮影が実施された。吉田先生は、昨年12月に本学地域防災教育研究センターが主催した「レジリエント社会・地域共創シンポジウム」にも参加されており、これまでの学術交流が現場での協働へとつながる形となった。また、嵜山院長が本学医学部の卒業生であることも、人的ネットワークを基盤とした連携の広がりを感じさせる出来事であった。

 今回の視察を通じて、原子力災害時の医療対応における実践的な連携の重要性と、大学・医療機関・地域が一体となった体制構築の必要性が改めて確認された。本視察は、長崎大学、済生会川内病院、本学の三者をつなぐ新たな協働の出発点となるものであり、今後は教育、訓練、研究の各面において継続的な連携の深化が期待される。
 原子力災害という複合的リスクに備えるためには、平時からの顔の見える関係づくりと実践的な訓練の積み重ねが不可欠である。本視察は、その連携の芽が確かに生まれた瞬間を記録するものであり、地域の安全・安心を支える基盤形成に向けた重要な一歩となった。


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