2025年7月11日(金)、鹿児島大学地域防災教育研究センター主催の第47回鹿大防災セミナー「地域防災の取組と実践」が開催されました。今回のセミナーは会場とオンラインのハイブリッド形式で行われ、合わせて380名近くが参加し、本センター調査研究部門長の寺本行芳教授(農水産獣医学域農学系)の司会進行のもと、二つの講演が行われました。
最初に、地域防災教育研究センター長の酒匂一成教授(理工学域工学系)が「地域防災教育研究センターの取組と趣旨説明」と題して講演を行いました。酒匂センター長は、現在進行中のプロジェクト(2022~2027年度)の概要を説明し、「大規模火山噴火に伴う複合災害の発生メカニズム解明と影響評価」に取り組んでいることや、研究成果等様々な資料が散在しないよう「総合防災データベースの構築とその利活用」を図り、センター兼務教員が作成した防災研修教材等、各種資料をセンターのホームページで公開していることを紹介しました。さらに、「学際的防災研究成果を活かした防災人材育成」のため防災士の資格取得につながる「いのちと地域を守る防災学Ⅰ・Ⅱ」を開講していることや、「研究成果の地域社会への実装と地域防災力の向上」のためセミナーやシンポジウムを開催していることなどを紹介しました。

次に、鹿児島市危機管理局危機管理課の井口正人火山防災専門官(京都大学名誉教授)が「桜島大規模噴火に対する地域防災計画実践における課題の克服に向けて」と題して講演を行いました。鹿児島市では、本年4月に「桜島火山防災研究所」を設置し、井口専門官が所長を兼務されています。井口専門官は、現在桜島は大規模噴火を考えざるを得ない時期に来ているということについて、データを基に解説された後、大正噴火について説明されました。次に、気象庁から噴火警戒レベル5が発表された場合、桜島は全員島外避難となるが、鹿児島市街地側では大量軽石・火山灰の降下とその後の土石流、地盤沈下、地震、津波に警戒すべきと説明され、鹿児島市は噴火前に鹿児島市外の避難所等に広域避難をするよう避難指示を発令することとなっているが、大規模噴火による広域避難の仕組みがあることが市民に周知されていないことが一番の課題であり、避難の必要性を理解するためのリアリティのある教材の開発に取り組む必要があると述べられました。さらに、市街地に降る軽石・火山灰の量は約1億㎥と想定され、早期の降灰除去が必要であるが、宅地の軽石・火山灰を自分で除去できるのかが大きな問題であり、また、災害廃棄物仮置き場候補はあるが圧倒的に不足しているとともに、そこまでのトラック輸送も問題となると指摘されました。そして、除去までに非常に時間がかかり、軽石・火山灰により雨水を排水できなくなるため、都市域で土石流が発生することが想定されると説明されました。これらを踏まえ、桜島火山防災研究所では、長期研究計画を策定して、避難から復旧・復興まで段階的に研究を進めることとしているとのことでした。


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