去る5月17日(土)に鹿児島県、鹿児島地方気象台及び鹿児島大学地域防災教育研究センターの主催により、令和7年度県民防災講演会「南海トラフの巨大地震~その時にあなたはどう備える~」がコミュニティセンター志布志市文化会館で開催され、約200人の参加がありました。
令和6年8月8日に発生した日向灘地震で、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されたことから、全国的に南海トラフ巨大地震や巨大津波への関心が高まっており、鹿児島県においても、太平洋沿岸や島嶼部を中心に、これまでに経験のない甚大な被害が想定され、地域住民一人ひとりの防災意識の向上がこれまで以上に求められています。
本講演会は、南海トラフ地震に備えるための最新の情報や知識を学ぶとともに、要配慮者への支援体制や防災・減災の取り組みにおける自助・共助の重要性について考える機会として企画されました。
講演では、最初に、鹿児島地方気象台の安藤忍地震津波火山防災情報調整官から、「南海トラフ地震に関連する情報~南海トラフ地震臨時情報と取るべき防災対応~」の演題で話がありました。
まず、南海トラフで繰り返し地震が発生する理由や国が公表した被害想定についての説明があり、突発的な地震に日頃から備えていれば被害が軽減されると話されました。また、津波のメカニズムについて説明があり、津波注意報・警報が出た場合はすぐに高いところに逃げるよう呼びかけていました。
そして、南海トラフ地震臨時情報について説明があり、臨時情報は地震の発生を予知する情報ではなく、必ず巨大地震が来るわけではないが、少しでも被害を減らすために出されていることや、日頃の備え、点検が大事であると話されました。また、インターネット上の情報が全て正しいとは限らず、周りと情報を共有する前に、気象庁などの公的機関で必ず入手した情報源の信憑性をチェックするよう注意がありました。
会場からは、津波の高さについての質問があり、安藤調整官から、津波は普通の波とは異なり、30cmの高さでも必ず足をすくわれ危険であるとの話がありました。
次に、志布志市の萩原政彦水道課長(前危機管理監)から、「自治体における大規模地震災害への備え~自治体としての備えと対応~」の演題で話がありました。
萩原課長が危機管理監となった時期は、新型コロナウイルス感染症が蔓延しており、感染拡大を防ぎながら防災意識を高め、どのように指定避難所を運営すべきかに頭を悩ませていたとのことであり、自ら考え備えることができるよう、日頃からの備えを進めておいていただきたいと話されました。
また、志布志市の取り組みとして、自助・共助の意識を高めるため、家庭教育学級での出前講座や高齢者サロンでの防災講話を行っており、防災フェスタを自主的に行う地域が出てくるなどの成果が見られることや、避難所を地域住民で運営するためのキットを準備していることなどの紹介がありました。
さらに、予知の困難な地震・津波からの減災対策として、平時からの自助・共助を高めておいてほしいと呼びかけていました。
会場からは、志布志市と隣接する大崎町との連携について質問があり、萩原課長から、近隣自治体との連携に向け作業を進めているところであるとの話がありました。
最後に、鹿児島大学医学部保健学科の日隈利香助教(地域防災教育研究センター兼務)から、「誰もが安心できる環境をめざして~災害時要配慮者の視点から考える~」の演題で話がありました。
まず、今年3月に能登半島地震の被災地の現地調査を行った結果、道路の整備が進んでいないことが復興の妨げになっていることや、地盤が弱いところに建っていた家は新しくても倒壊していたことなどの報告があり、自宅のある場所のハザードマップを確認する際に、津波のリスクや土砂災害のリスクだけではなく、地盤の固さはどうなっているのかなど、地震の危険度を推測しておくことが必要と話されました。
そして、災害時に窃盗団や性犯罪等犯罪被害の報告もあることから、自助と共助に取り組むことで身の安全を確保することや、最低3日間、できれば1週間程度の飲料水や食料、経管栄養や胃ろう用栄養剤、簡易トイレ、非常用電源、常備薬などを確保するよう話され、特に、高齢者や医療的ケア児がいる世帯などはそれぞれの特性に合った災害への備えや留意点などが必要であるとの認識で、個別的災害対策について詳細な説明がありました。
さらに、イタリアでは十分なT(トイレ)、K(キッチン・食事)、B(ベッド)が48時間以内に避難者に提供されるが、日本では阪神淡路大震災から30年経った今でも避難所の雑魚寝の風景は変わっていないとの指摘がありました。
なお、本講演会の内容については、6月30日まで鹿児島地方気象台のYouTubeにて配信されています。
最後になりましたが、本講演会を開催するに当たり共催いただきました志布志市、並びに後援いただきましたNHK鹿児島放送局、FMかのや、FMきもつき、FM志布志、気象友の会の皆様に厚くお礼申し上げます。


